5分で分かる!2026年12月施行改正公益通報者保護法と企業の対応

はじめに

公益通報者保護法は、2006年に運用を開始し、2020年に改正され今に至りますが(令和2年改正)、2025年に再度改正されました(令和7年改正)。実際に施行されるのは2026年12月からです。

本コラムでは、①改正法の概要、そして②事業者としてどう対応したらいいか、を解説します。

1 公益通報者保護法とは?

公益通報者保護法とは、労働者等が公益のために通報したことを理由に、解雇などの不利益な取り扱いを受けないよう、どのように通報すれば保護されるかというルールを明確にしたものです。

そもそも公益通報とは、「①労働者等が、②一定の法令違反行為を、③不正目的でなく、④定められた通報先に通報すること」を指します。あらゆる通報が保護されるわけではなく、一定の要件があります。

2 2020年の改正について

公益通報者保護法の運用後も、残念ながら不祥事の隠蔽や通報者への不利益処分が相次ぎました。そのため、2020年に以下の通り改正しました。

◇改正点

大きく次の3点が変更されました 。

  1. 公益通報として扱われる範囲を拡大
    保護される通報者・対象法律など追加
  2. 通報者の保護を拡充
    保護要件の緩和、退職者・役員の保護
  3. 事業者・行政機関のすべきことを拡充
    体制構築義務など

これらにより、公益通報をより行いやすくするとともに、制度の実効性を高める事が図られました。

◇特に事業者が意識すべきポイント

改正により、事業者として行わなければいけない事は次の4点です。

  1. 公益通報に対応する担当者(従事者)を指定
  2. 通報受付窓口の設置、整備
  3. 通報者を保護する体制の整備
  4. 体制をきちんと機能させるための周知・教育など実施

特に1に関しては、通報者を特定する情報を漏洩した場合に刑事罰が適用されるようになりました。

この改正を受けて、相談窓口などの通報受付体制・制度がより一層整備されることとなりました。

3 2026年12月施行の改正法について

◇改正の背景

2020年改正により一定の効果は得られたものの、一方で対応体制の不備や義務の不履行など、課題も浮かび上がりました。消費者庁が実施したアンケート によると、内部通報制度の周知・研修不足、活用不十分、機能不全の部分がある事も分かりました。
(参照:「内部通報制度に関する就労者1万人アンケート調査の結果について」

そのため、①事業者側の体制整備の徹底・実効性の向上、②通報者の範囲拡大、③通報阻害要因への対処、④不利益取扱いの抑止・救済強化、の4項目を主眼とした改正が行われました。

◇改正点

主な改正点は、下表のとおりです。

    大項目細目備考
    体制整備の徹底
    実効性の向上
    従事者指定義務の違反に罰則刑事罰
    違反に関する立入検査への拒否等に罰則刑事罰
    通報体制の周知義務
    通報者の範囲拡大フリーランスを追加
    通報者(フリーランス)への不利益取扱いを禁止
    通報を阻む要因への対処不当な通報者探しを禁止
    通報の妨害禁止刑事罰
    不利益取り扱いの抑止・救済通報を理由とした不利益取り扱いに対し罰則刑事罰
    事業者に立証責任を転換

    この中で、特に事業者が意識すべきポイントを見ていきましょう。

    ◇特に事業者が意識すべきポイント

    事業者としてすべき対応は、以下のとおり纏められます。

    1. 通報受付体制を確実に整備し、運用しましょう
    2. 保護される通報者の範囲が広がります
    3. 安心して通報できる環境を作りましょう
    4. 不利益取り扱いは禁止です

    それぞれ、詳しく確認します。

    (1).通報受付体制を確実に整備し、運用しましょう

    (1)-1 従事者の指定、教育

    主体的に通報対応を行う「従事者」を指定することが必須です。従事者には守秘義務が課せられていて、守秘義務に違反した従事者には刑事罰が科されます。そのため、従事者当人が「自分は従事者なんだ、守秘義務を負っているんだ」と明確に理解できるように指定することが重要です。指定にあたり、書面を作成するのも有効でしょう。

    また、従事者に対して教育・研修を実施することも必要です。従事者の指定義務に違反しかつ消費者庁の命令を無視した場合、事業者に刑事罰が科されます。

    (1)-2 通報制度の周知

    また事業者は、通報制度そのものを従業員等に説明する義務も負います。周知すべき内容は、通報窓口の連絡先や対応組織図、これまでの実績など様々考えられます。周知する項目については、消費者庁が公表している法定指針が参考になるでしょう。大切なことは「どういった情報を開示したら、従業員等が通報制度を利用しようと思えるか」という視点に立って考えることです。一度周知して終わりではなく、定期的に周知するとともに従業員アンケート等を通して通報制度について意見を収集することも有用です。

    従業員300人以下の事業者については、通報制度の整備は努力義務です。しかし、今後通報制度が社会にますます浸透すると、今まで導入義務のなかった事業者についても体制整備義務が課される可能性があります。民間の支援サービスも増えてきていますので、このタイミングで通報制度の新設を一度検討してみてはいかがでしょうか。

    (2).保護される通報者の範囲が広がります

    今回の改正により、通報者の範囲にフリーランスも含まれました。それに伴い、公益通報を理由とした契約解除、報酬減額などの不利益取扱いは禁止されます。事業者は、従業員等だけでなくフリーランス向けにも通報体制を整備し、また彼らに制度を周知する必要があります。例えば、契約関係書類に窓口の連絡先を記載しておくことなどの方法が考えられます。

    (3).安心して通報できる環境を作りましょう

    従業員等が通報対象事実に接した際、躊躇わずに通報できる環境を作ることが重要です。特に、事業者は下記について事業者内に周知徹底する必要があります。

    • 探索行為の禁止:
      いわゆる『犯人探し』です。通報者本人だけでなく周囲で見聞きしている他の従業員等も恐怖を感じ、通報そのものを躊躇ってしまいます。
    • 妨害行為の禁止:
      例えば、「通報をするな」「通報したら報復してやるからな」と予め従業員等に話すことが該当します。そのような事を言われた従業員等が通報を避けるのは、想像に難くありません。

    (4).不利益取り扱いは禁止です

    (4)-1 不利益取扱いの禁止

    公益通報をした事を理由に解雇や降格・減給等をすることは、令和2年改正でも禁止されています。しかし令和7年改正では、公益通報を理由とした解雇・懲戒に対し刑事罰が新設されました。実際に行った者には直罰(6月以下の拘禁刑又は30万円以下の罰金)、事業者には罰金(3,000万円以下)が科されます。

    不当な配置転換や嫌がらせなど他の不利益取扱いについては、刑事罰の対象とはなりません。しかし、それらの行為も法律で禁止されていることには変わりありません。不利益取扱いが横行すると従業員等が萎縮し、適切な通報の妨げとなります。事業者側が「不利益取扱いは禁止されている」と明確なメッセージを発信し、不利益取扱いの発生を抑止することも重要です。

    (4)-2 不利益取扱いからの救済

    「公益通報と不利益取扱い(解雇・懲戒)に関連性がある」と申し立てがあった場合、その関連性について立証する責任は事業者が負います。

    もしも「通報と解雇・懲戒は全く関係ない」と証明できない場合、その処分は自動的に『通報を理由とした解雇・懲戒』と見なされるため、注意が必要です。

    4 まとめ

    このコラムでは、2026年12月から施行される改正公益通報者保護法の概要を見てきました。そして、事業者として通報体制を一層整備し、また見直すべき場合があることを確認しました。

    通報制度は、実際の対応によるノウハウの蓄積がすぐに叶うものではない一方で、関連する法律が刻々と改正されています。人員も限られるなか、担当者・担当部署だけで運用するのはなかなか大変です。

    フェアリンクスコンサルティングでは弁護士監修の下、年間1,000件以上の内部通報を受け付けております。これまでの内部通報受付総件数は7,000件を超えております。豊富な経験を基に、クライアントの実情やニーズに合わせ制度設計から通報窓口の運営まで幅広く対応します。

    通報制度についてお困りの事、お悩みの事がございましたら、ぜひフェアリンクスコンサルティングまでご相談ください。

    ※この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

    ※この記事の監修者
    田島正広
    弁護士・フェアリンクスコンサルティング株式会社代表取締役

    公益通報・内部通報制度の運用支援、外部窓口対応、企業コンプライアンスに関する実務を監修。